佐野章二(有限会社ビックイシュー日本代表)
【プロフィール】

1941年大阪市生まれ。地域計画プランナーとして活動する傍ら、実態調査や政策提案など市民公益活動の基盤整備を行う。NPO法の基礎ペーパーの一つとなった「市民公益活動の基盤整備に関する調査研究」などの取りまとめを行う。2001年NPO「シチズンワークス」を設立。市民が興味のあるテーマで自由な議論を行う「市民研究講」のなかの「ホームレス問題研究講」から「ビッグイシュー日本版」発行のアイディアが生まれる。03年5月より現職。07年9月、非営利団体「ビッグイシュー基金」を設立。著書に『ボランティアをはじめるまえに―市民公益活動』がある。

ビックイシュー日本版

Interview #009-2    2009年01月24日 晴れ    @大阪府大阪市/ビックイシュー日本本社

社会起業・ソーシャルビジネスの最前線から見えるもの(part2)

2.100%不可能?既存概念を打破!

-かなり認知度の高まった『ビックイシュー』ですが、経営状況は如何ですか?

部数としては、低位安定といったところでしょうか。運営当初は毎年1000万円強の赤字でしたが、2007年10月(81号)から200円だった定価を300円に引き上げたことで、収支は劇的に改善されました。そのため第5期の決算ではようやく黒字に転換することができたんです。個人的には値上げはしたくなかったのですが仕方ありませんね。ただおかげさまで雑誌の販売数には影響はでませんでした。私たちのお客様はこの値上げに理解を示してくれたんです。それが救いでした。

長いこと東京で伸び悩みましたが、ようやくここにきて東京を中心とした東日本の販売数が西日本を上回るようになりました。現在では東の方が1.5倍ほど売れています。何とか軌道にのったといえるかもしれません。これからは2007年に立ち上げた「ビックイシュー基金」にも財政的にバックアップしていけるようにしていきたいです。

-『ビックイシュー基金』について教えて頂けますか?

「ホームレスが収人を得る機会を提供し、自立を支援していく」という我々のミッションを実現するためには、最終的に就職活動へとつなげることが必要性です。これまでの活動を通じて、販売員の中にも就職できる段階の人たちが出てきました。ただ就職活動につなげていくには、もっと販売員一人ひとりに対応した丁寧なサポート体制が必要なことも分かってきたんですね。そこでそれを支援していく非営利団体として、『ビッグイシュー基金』を立ち上げました。

基金活動の骨格は「3つの応援プログラム」から構成されています。1つ目は「生活自立応援プログラム」。これは、仕事や家を失い、身近な絆をも失って「一人ぼっち」になったホームレスの人たちが、人や社会との「つながり」を取り戻していけるよう相談にのるものです。生活や医療、住宅、法律など様々な相談に応じていきます。2つ目は「就業応援トレーニングプログラム」。これは履歴書の書き方からマナー、PCのスキル、そして資格などを身につける支援を行い、仕事の選択機会を増やすことを目的とします。3つ目は「スポーツ文化活動応援プログラム」。これは家や仕事を得ても、豊かな日常生活を持続するには「生きていることへの喜びや意欲があってこそ」との考えから、ダンスや歌、サッカーなど様々なクラブを作ったり、料理教室などの講習会も開いて、楽しい活動にチャレンジする機会を提供していきます。『ビックイシュー』の"販売"と"基金"の両輪でミッションの実現を目指していきたいですね。

-経営の方も軌道にのって、新しいチャレンジも始まった『ビックイシュー』ですが佐野さん自身、今のような状況になると最初から考えていたのでしょうか?

最初から自信があったわけではありません。むしろ不安だらけです。多くの人たちから反対されました。「活字離れが進むなか、若者向けの雑誌は売れない」「日本には路上で雑誌を売り買いする風習がない」「読み応えのあるフリーペーパー・無料雑誌があるので、有料で売るのは難しい」「ましてホームレスからは買わない」散々言われました。まさに四重苦。どれももっともな意見ですし、従来の発想からみれば、当たり前ですよね。でも私たちはあきらめなかった。スタッフの情熱に押されたところもありますね。

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