
佐野章二(有限会社ビックイシュー日本代表)
【プロフィール】
1941年大阪市生まれ。地域計画プランナーとして活動する傍ら、実態調査や政策提案など市民公益活動の基盤整備を行う。NPO法の基礎ペーパーの一つとなった「市民公益活動の基盤整備に関する調査研究」などの取りまとめを行う。2001年NPO「シチズンワークス」を設立。市民が興味のあるテーマで自由な議論を行う「市民研究講」のなかの「ホームレス問題研究講」から「ビッグイシュー日本版」発行のアイディアが生まれる。03年5月より現職。07年9月、非営利団体「ビッグイシュー基金」を設立。著書に『ボランティアをはじめるまえに―市民公益活動』がある。

現在、国内に2万人以上いるとされるホームレス。この深刻な社会問題の解決に、「路上生活者を販売員にする」という新しい発想で挑む『ビックイシュー日本』代表の佐野章二さん。最近ではデザイナーやアーティストとのコラボ企画もあり、メディアに取り上げられる機会も多い雑誌『ビックイシュー』は、2003年9月の創刊以来、着実に若い読者を増やし、ホームレスの自立化に寄与してきた。2007年からは『ビックイシュー基金』を設けるなど、常に新しいことにチャレンジし続ける社会起業家のトップランナーである佐野さんにこれからのソーシャルビジネス、ソーシャルデザインについて聞いてみた。
1.『ビックイシュー』って何?
-まずは『ビックイシュー』の仕組みについて教えて頂けますか?
『ビッグイシュー』は、ホームレスの人だけが販売員になれるユニークな雑誌です。もともとは1991年にイギリスのロンドンで始まったものなのですが、今や世界28ヵ国に拡大しています。特にイギリスでは発行部数20万部の有力週刊誌に育ち、メディアとしても影響力を持っているんですよ。残念ながら日本ではそこまでには至っていません。
各国によってビジネスモデルは若干違っています。日本では、販売員が300円の雑誌1冊を売ることで160円の収入を得るという仕組みになっています。具体的には、まず販売員は無料で雑誌を10冊受け取り、その売上げを元手に、定価300円の雑誌を1冊140円で仕入れます。1冊売れるごとに160円の収入が販売員に入るのです。一人の販売員の平均的な売上げは1日25冊で収入は4000円になります。これだけのお金があれば、食事をして、1泊1000円前後の簡易宿泊所に泊まり、路上生活から抜け出すことができる。更に頑張って、あと10 ~ 15冊多く売れば、少しずつ貯金をして敷金をつくり、賃貸アパートを借りることだってできるのです。
ここで重要なのは住所を持つことなんですね。なぜなら住所があれば、ハローワークに通って就職活動をはじめられるからです。今、全国でおよそ120人の販売員が「ビッグイシ
ュー」の仕事に就き、自立への挑戦を続けています。
-雑誌の購読者層はどうなっているのですか?
ターゲットは35歳以下です。なぜ若者にターゲットを絞ったかというと、ホームレスと若者には「仕事がない」といった共通項があることに気づいたからなんです。今の日本は「一度社会からはみ出したら、なかなか元に戻れない」という社会構造で、非常に硬直化しています。そのことを切実に感じているのがホームレスであり、若者ではないかと私たちは考えました。そこで20~30代前半の人を読者として想定し、「若者の立場から社会問題を取り上げ、若者がマイナスの社会的条件を、未来のプラスに転換していけるようなオピニオン誌」というコンセプトに辿り着いたわけです。
実際購読してくれているのも、狙い通り35歳以下の若い世代です。特に女性が多いですね。また7割は固定客というのも特徴なんです。対面販売ですから、顧客とのコミュニケーションを大事にすることでリピーターをつかんでいるのだと思います。
-スタッフも若いですね?それに女性が多い。
そうなんです。有給スタッフ20人、ボランティアスタッフ200人の構成ですが、平均年齢は20代ですし、女性の割合が多いですね。ボランティアの女性が多いので周囲の方から驚かれますね。この理由は一概には言えませんが、子供を産む女性の方が社会の問題を自分の問題、自分の身体の問題として真剣に捉えているためかもしれません。




