Casey Caplowe(ケイシー・カプロウ)(GOODクリエイティブディレクター)
【プロフィール】

1981年生まれ。ブラウン大学卒。2つのアパレル関連のベンチャー企業を立ち上げた後『GOOD』に参加。ビジョン確立に参与しクリエイティブの責任者として、編集方針と雑誌のデザイン、ブランディングを手がけている。カプロウの構想のもとで『GOOD』は、優れたデザインと個性的なビジュアルによって、創刊した年に早くも全米雑誌賞にノミネート。ビジュアル・コミュニケーションに重点を置き、斬新なグラフィックを駆使して、データや情報を表現。またウェブ上でもインターアクティブな要素を取り入れたプロジェクトや、オンライン・ビデオの独特の作風をデザイン。またウェブサイト「good.is」のデザインリニュアール全体を指揮するなど、メディアを使った様々なプロジェクトを展開中。

good.is

Art&culture|Globe

Interview #011    2009年02月11日 曇り    @東京都港区/国際文化会館

ソーシャルインパクトを与え続けるメディアの可能性

社会をより良くすることを目的に、政治問題から環境問題、アートとデザイン、持続可能なライフスタイル、社会起業家と多岐にわたるテーマを取り上げている隔月誌雑誌『GOOD』はまさにソーシャルとデザインをつなぐメディアだ。2006年9月に創刊され70,000人もの読者数をほこっている。そのデザインクオリティは高く、ビジュアルとメッセージを巧みに融合した紙面づくりを行ない、業界紙メディア、インダストリー・ニュースレターで同年に創刊された最も注目すべき雑誌の一つと評価されている。現在は、ウェブ、ビデオ、ライブのイベントを通じて、会社の事業と読者のコミュニティを拡大、様々な非営利団体との共催イベントにも取り組んでいる。こうした活動をクリエイティブの面から支えている中心人物が今回のケーシー・カプロウ氏。ソーシャルデザインフォーラムに参加するために来日したカプロウ氏にソーシャルデザイン、そしてメディアの可能性について聞いてみた。

1.『GOOD』から起きるソーシャルムーブメント

―『GOOD』を始めるに当たっての問題意識やきっかけについて教えてもらえますか?

まず『GOOD』の問題視ですが、先ほどCut‐jpの活動を聞かせて頂いて「社会の小さな活動をつなげていくことによって大きな力にしていく」という方向性は本当にGOODのコンセプトに近いと思っています。同じような問題意識からGOODを始めました。

私たちが『GOOD』を始めた時、社会に生きる一人一人が"向上"することをお互い共有できればと考えました。都会の中の農業とか、社会起業とかの小さな団体や会社があるのは知ってたのですがそれらは1つ1つ単独に存在している活動でした。私たちは、例えば「環境」や「政治」などのテーマと「アートプロジェクト」と結びつけたらどうなるかと考えたのです。実際そういうつながりはなかったので、それをつなげたら大きなムーブメントになるのかなと思いましたわけですね。GOODはそういう"つながり"、ネットワークを作るために、雑誌というメディアを創ったのです。そこで、さまざまなテーマを設定しながら、「これかっこいい(cool)」、「それかっこいい(cool)」、「あれかっこいい (cool)」っていうのを雑誌の中に取り入れていきました。地面に旗を立てるみたいに「見て、これが起きているんだよ!」っていうことを示そうと思ったわけですね。

と同時に、「こうした新しいことを一緒に創っていけるんだよ!」ということをメッセージとして伝えていった面もありますね。「みんな革新的でクリエイティブになるとこんなこと起こりますよ!」というメッセージです。こうしたことを、私たちは自分たちがここで言わなくちゃいけないと思いました。メディアっていうのはそういうメッセージを発信するという意味ではとてもいいと思ったんですね。

そうしたメディアは当時ほとんどありませんでした。私たちにとってはこうした新しい活動の"概念"自体を創出して、ブランディングしてきたと思っています。例えば環境のことをやっている団体があっても、自分たちはそれに乗りたいという気にならなかった。正直、その団体とかの一員にはなりたくないと思ったわけです。そういった団体が持っている雰囲気みたいなものが自分たちとはなんだか合わなくて、もっと楽しくって興味をそそるようなものがやりたいと思っていました。だから、自分たちに合っているものを作り上げたいなぁと思ったのです。私たちが動き始めてから(もちろん私たちの力だけではないと思うけど)、人々のカルチャーのようなものが大きく変わって、人々がこういった前向きな状況を高く評価するようになってきています。こうした動きが今ではアメリカ全土で起こっていますし、世界でも起きていますよね。中でもLAではとってもその動きが強いし、NY,サンフランシスコ、オースティン、といったリベラルな地域では『GOOD』のアイディアは強く浸透しています。

面白いことに、私たちの競合相手みたいなのは2種類あって、一つ目は「環境」とか「アート」とか一つの分野に焦点を当てている人たちで、二つ目が大手のメディアになります。前者は例えば、Tree Hugger.comみたいな「環境」というひとつの分野で活動している団体で、スタンスはとても自分たちと近いのですが、彼らがやっているのは「環境」のことのみなんです。始めのときに自分たちは、『GOOD』は環境だけとかではなくて、広い意味で「GOOD」(いいこと)に焦点を当てようと思いました。クリエイティブなことに関われる形の「GOOD」(よいこと)に焦点を当てながら、世界に革新的に関わっていくという点で(他の専門メディアとの)違いが出せると思っています。

後者の大手メディアですが、最近では私たちが取り上げているような情報をどんどん取り上げてきているんですよね。もちろんこれは私たちが作り上げてきたカルチャーが国内で根付いてきているからこそだと思っていますし、私たちのアイディアは多くの人たちに理解をされてきたからなのだと思っています。これからの私たちの役割は、"次のステップ"を探している人たちに何かを提供することなのかと思っています。「私たちは『GOOD』に共感しています。そして次に私たちには何ができるのかな?」と考えている人たちですね。私たちがこれまでやってきたことは、まず雑誌で社会起業家などに焦点を当て、それに携わっている人たちとか、プロジェクトとか、ビジネスとかを取り上げることでした。それらの力を使って世界をもっと良いものにしてこようと思っていました。次にできるのはそういう人たちを繋げていくっていうのがいいことなのかなと思っています。ムーブメントを起こすみたいな感じで。でも、『GOOD』に賛同する大多数の人々は、自分たちで自分の組織や団体を作ることにはまだ準備ができていなかったりするけれども何かをやりたいと思っている人たちなんですよ。だから彼らを支援することで大きなムーブメントを起こしていきたいですね。

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