島田昭彦(株式会社クリップ代表取締役社長)
【プロフィール】

1964年3月、京都市内の紋章工芸を営む家に生まれる。立教大学卒業後、スポーツ総合誌『Number』の編集に10年間携わる。2005年、ヒト、モノ、コト、文化をクリップしビジネス・プロデュース・デザインする総合企画会社「クリップ」設立。東京、京都、海外を行き来しながら、伝統とモダンの癒合をキーワードに企業コンサルティングを実施。デザインホテル『HOTEL SCREEN KYOTO』、友禅アロハの『パゴン』、和傘照明『古都里-KOTORI』などのプロデュースを手掛け、京都の地域活性、伝統工芸老舗の再生に取り組む。

株式会社クリップ

Interview #003-2    2008年12月16日 晴れ    @東京都港区/六本木ヒルズ

地域×クリエイティブでビジネスが生まれる (part2)

2.ヒト・モノ・コト・文化のコラボレーター

 ―地域には魅力的なものがあるのに、なかなかそれがつながっていかない。その間にその魅力を「翻訳」できるヒトが必要だと常々痛感しているのですが、まさに島田さんはそれを体現されているのですね。具体的にはどういった事例がありますか?

はい、まさにその問題意識が僕が起業するにあたって一番大切だと考えたことです。リ・クリエイティブだったり、文化の翻訳ということが必要だと思っています。そこで人、モノ、コトを、クリップすることをミッションとした会社をつくりました。

このクリップというコンセプトをベースプロジェクトを次々に立ち上げていきました。例えば、先に挙げた友禅染の会社と、京友禅のアロハシャツをつくりました。職人には、染めの技術や図案集という材があります。その蓄積を生かし、それを洋風のシャツに変えて新しい商品をプロデュースしたわけです。

もともとアロハシャツはハワイに移民した日本人が持参の着物を縫い直し、シャツにしたものルーツなんですね。それがハワイの正装になった。その発想を参考に、もう一回先祖帰りして、京友禅柄でやってみようという発想でした。

染め物をやられている方は、こういう話はもちろんご存じですが、そこからアロハシャツを京友禅で作ってみようという発想はできない。大切なのはこうしたストーリーづくりなんですね。

もちろん、それだけでは売れない。同じくらい重要なのがプロモーションです。スポーツジャーナリスト時代で得た人脈を使って、さまざまな人に京友禅アロハを知ってもらい、着てもらいました。タレントさんや歌手の方など、クリエイティブクラスの方に、まずはサンプル提供し、スタイル感を提案するところから始めたわけです。その結果、NHK朝の連続テレビ小説『ちりとてちん』の中で使っていただいたりして、さまざまな波及・宣伝効果が起き、京友禅の会社は持ち直していったんです。

同じように、京和傘の老舗「日吉屋」との連携があります。和傘の需要が激減している状況で、何とか会社を立て直したいとの相談を受けたのですが、その時もまず和傘そのものの市場を捻出するのは厳しいと判断しました。その上で、和傘の構造を活かしながら、傘ではない新しいプロダクツとして新市場を開拓できないかと思案しました。

その時に浮かび上がってきたアイデアが照明器具。これであれば、国内はもちろん海外でも勝負できるのではないかと考えました。この元になったのが、光をつかったイベントへの参加です。光というキーワードがどこかに残っていたんですね。こうしたイベントで知り合った照明デザインナーとコラボして、和傘を根本から再デザインし、その構造を活かした照明器具を生み出しました。

-京都の素材をリ・デザインすることで新しい付加価値を創出されているわけですね。島田さんの言葉の端々に「地域活性」のキーワードが出てきます。そもそも島田さんと出会ったのもそれがご縁でしたね。島田さんの「地域活性」の基本的な考え方は、企業戦略を中心に地域を活性化させていこうということなのでしょうか?

それが全てではないですが、まずはそこからだと考えています。僕ら個人にできることは限られています。町全体を一気に盛り上げるなんてことは、至難の業です。それよりも、僕はドリルで壁を突き破るような一点突破型で、でもすごく社会に対してインパクトのあるようなことを小規模でやってしまったほうが、展開が早く効果的だと思っています。

発信力の強い点をつくっていき、やがて線や面、立体にしていくようなプロセスを狙っています。老舗が持ち直す、それにより魅力的なスポットが登場する。そういったことが結果的には地域の活性化につながると考えています。

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