丸 幸弘(株式会社リバネス代表取締役)
【プロフィール】

1978年、神奈川県横浜市生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻博士課程を修了。博士(農学)。大学院在学中から教育とビジネスに興味を持ち、学生団体Business Laboratory for Students設立に関わる。そこで得た全国の学生ネットワークをもとに、世界で初めてのバイオ教育のベンチャー、有限会社リバネスを理工系大学院生のみで2002年に設立。2004年には増資し株式会社リバネスに組織変更、代表取締役に就任。多数のバイオベンチャーの立ち上げを手伝い、役員や顧問を務める。現在、バイオ・環境・アグリ・ナノテク・宇宙の5領域を最先端科学の重点領域と位置づけ、研究開発も視野に入れた事業展開を実施中。

株式会社リバネス

Interview #002-2    2008年12月14日 雨    @千葉県柏市/UDCK

最先端科学者集団が描く21世紀型企業と未来 (part2)

2.21世紀型企業と「ありがとう」を集める仕組み

―リバネスさんのコアコンピタンスは理系研究者を集めているということころにあるようですね。そこがとてもユニークな競争優位性になっている。丸さん自身も研究者であるわけですが、研究者である丸さんが経営を志向されたのはなぜですか?

たしかに私は経営者ですが、今も研究をやっている意識が強いんです。ただ他の研究者と違ってある一つのテクノロジーについて研究しているわけではなく、会社とかその影響を受ける社会とかを対象に研究している感覚です。これからの21世紀型の企業の在り方に興味があります。21世紀最大の企業があるとしたらそれはどういう企業なのか、私自身が実践しながら研究しているわけです。先ほど30年計画を立てたお話をしましたがそれも研究計画と同じ感覚ですね。

21世紀型の企業を考えてきて見えてきたキーワードが二つあります。一つはグローバル、そしてもう一つはテクノロジーです。世界目線で技術をもっている企業が21世紀型企業に必要な要件であり、それに適切な人材こそが研究者人材だと思っています。特に博士号(ドクター)を持っている人間です。なぜなら彼らは研究を通じて20代前半から常に世界を意識しているわけです。だから世界に対してびびっていない。もちろん自分たちの足元、ローカルな視点も大事で、自分たちの研究室(ローカル)から世界(グローバル)へつながっていくことを実践してもいる。そうした意識を持ちながら実際に手を動かし技術を蓄積しているわけです。こんなに適した人材は他にいませんよ。

―21世紀型企業の条件とは他にどういうことが考えられますか?

大きく3つのポイントがあると思います。まず一点目が売上至上主義ではないことです。20世紀型の企業は売上競争をしてきたわけですが、これからはそういう競争の時代ではないと思っています。大切なのはイノベーティブかどうかということであり、それに対応した基準であることが重要。例えば、私たちの会社で新しい事業を立ち上げる基準は「新しいか」「楽しいか」「必要か」のたった3つです。普通の会社のようにます売上・利益ということを考えない。逆にいうとこの3つがなければどんなに儲かる仕事でも私たちがやるべきことではないと判断します。もちろんこの3つは誰もやったことのないこと。だから収益性は見えにくい。これを考えるのは経営陣の仕事にしています。決して発案者だけに押し付けたりしない。どうやったらそれを売上にするか利益にするか、経営のプロとして私たち経営陣が考えるわけです。まずそうした姿勢を持つことが大切ですね。

二点目はネットワーク化されたフラットな企業であること。イノベーションの種は現場にあるし、若い人が持っている。ようは既存の組織でいけば末端にあるわけです。ここと常にどうつながっていられるかが重要だと思っています。だからフラットに一番若い世代と付き合わないとまずい。このフラットな状況の中で尖ったチームを創っていくことが大切になる。私たちの会社では予算を組織・事業部につけていません。このチームに配分しているんですね。つまり常にプロジェクトベースの考え方になっています。

三点目が社会貢献ができていることです。何のために私たちの会社があるかといえば「ありがとう」の気持ちを集めるエンジンとしてあると考えています。「ありがとう」が集まった分だけ集めた人の価値になるし、「ありがとう」をたくさん集めた人が価値のある人だと考えています。これは社内外どちらに対しても同じです。ただ重要なのはそれをお金や他人からの賞賛など外部評価を得るためでなく、個人の納得、自分にとって自分が楽しいからやっているといった感覚を持つことです。誰かのためではなく、自分のため。自分が我慢して世界を幸せにするというのではなく、自分のためにやったことで世界が幸せになっていく、というスタンスの社会貢献の仕方が正しいのではないでしょうか。自分がいなくても「ありがとう」が集まってくる仕組みが会社であり、そうやってハッピーな空間を創れることが21世紀型企業の条件になるような気がしています。

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