
丸 幸弘(株式会社リバネス代表取締役)
【プロフィール】
1978年、神奈川県横浜市生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻博士課程を修了。博士(農学)。大学院在学中から教育とビジネスに興味を持ち、学生団体Business Laboratory for Students設立に関わる。そこで得た全国の学生ネットワークをもとに、世界で初めてのバイオ教育のベンチャー、有限会社リバネスを理工系大学院生のみで2002年に設立。2004年には増資し株式会社リバネスに組織変更、代表取締役に就任。多数のバイオベンチャーの立ち上げを手伝い、役員や顧問を務める。現在、バイオ・環境・アグリ・ナノテク・宇宙の5領域を最先端科学の重点領域と位置づけ、研究開発も視野に入れた事業展開を実施中。

今のように変化が激しい時代を不安で生きるのか、それともワクワクしながら生きるのか、その姿勢の違いで未来はきっと違ってくるのではないかと思う。どういうわけだか僕らの周りには後者のタイプが圧倒的に多い。今回登場して頂く丸さんもそんな一人だ。最先端科学の領域から未来を見つめ世界に通用する21世紀型企業の創出に奔走している。でもそこには不思議と肩に力を張っている様子はない。むしろ自然体で楽しみながら難しい課題にチャレンジしている。「バイオ×教育」という分野からスタートし、「バイオ、環境、アグリ・ナノテク・宇宙を中心とした最先端科学分野」×「教育・人材育成・研究開発」と事業拡大をしているリバネス。その代表として活躍しながら個人としても多方面の才能とつながってる丸さんの話を通じて、ソーシャルデザインの本質を探ってみた。
1.「教育」は社会を変えるエンジン
-子供たちにバイオなどの最先端科学を小・中学校、高校の理科実験を通じて教える教育事業を柱に展開されているわけですが、そもそもこうした事業を展開しようと思った動機を聞かせて頂けますか?
教育事業というのは収益性を考えると実は非常に厳しいビジネスなんです。単発で事業をやっていては儲からない。一部の塾などを除いてほとんど儲かっていないのが現実だと思います。でもあえて私たちは教育事業からスタートしました。それは「教育」こそが社会を変えていくエンジンだと考えていたからです。
私たちの会社は15人の志を共有できる仲間とスタートし、その時描いたビジョンを実現するために30年プランを立てそれを一つ一つ進めています。私たちが目指しているものは世界に通用するイノベーティブな「知」を創造する開発メーカーでありコンテンツクリエイト企業であることなんですね。そしてそうあるために必要なのは、まずよい研究者に入ってきてもらう必要があるわけです。ところが子供の理科離れが叫ばれている中、教育現場ではそうした研究者を育てる仕組みが欠落している。そこで私たちがやるべきなのは、最初にいい研究者を育ててそういう人材を引き付けていくことだと、最初にバイオ教育の事業を立ち上げました。そういう意味で、私たちは教育事業をやっているのは未来の仲間づくりのためだといえますね。
またこうした教育ビジネスは私たち自身の人材育成にもなっています。子供たちと接することで教えている側が子供から学ぶことがとても多いのです。私たちは意識的に会社に理系人間を集めています。そのため論理的に物事を考えることのとても得意な人間の集まりなわけです。ところが子供たちに何か教えようとしても、論理では子供に伝わらない。なぜなら子供に伝わるのは感情だからです。現場で私たちはそうした感情を通じたコミュニケーションを学ぶわけです。加えて子供たちの発想から学ぶことも多い。子供たちの発想は豊かです。子供たちはある意味、矛盾の中に生きている。よい教育にはこの矛盾を受け入れる環境が必要なんですね。例えば「ゆっくり、急がせること」という発想です。そしてこの矛盾した環境こそが、イノベーションやクリエーションに必要な要素だと考えています。子供たちと接することで私たち自身がクリエイティビティやイノベーティブな思考を身に着けることができていると日々痛感しています。だから教育事業はやめられないのです。
ただ先ほどもお話ししたように、教育事業の収益性はとても低く、これだけではビジネスになりにくい。そこで教育事業で得たノウハウなどを民間の人材育成に応用しています。いま民間企業において開発力のある人材育成は大きな課題になっています。硬直化しているのは何も教育現場だけでなく、民間企業も同じなわけです。そこで民間企業の研究所に特化した人材育成プログラムを開発しています。これは教育事業で、"伝える""引き出す"ということに特化してトレーニングしてきた副産物から生じたビジネスといえます。こうした人材育成から現在はコンサルティングに発展するケースも出てきています。




