
勝屋 久(IBM Venture Capital Group 日本担当)
【プロフィール】
1962年、東京下町生まれ。1985年、上智大学理工学部数学科卒業後、日本IBMに入社。営業、マーケティング等の部署を経て、1999年社内のITベンチャー開拓プロジェクトチーム「ネットジェン(Net Generation Task)」のリーダーとなる。2000年よりIBM Corporationのグローバルチームである「IBM Venture Capital Group」の日本代表メンバーとして活動開始。これまで約2,600名以上のベンチャー経営者、700名以上のベンチャーキャピタリストおよびベンチャー支援者等とコンタクトし協力関係を築いた。2006年8月に、志のある数名と協力して「Venture BEAT Project」を立ち上げ、IT・コンテンツ業界の新しい形のコミュニティづくりに奔走中。
Interview #006-2 2008年12月24日 晴れ @東京都渋谷区/マークシティ
ネットワークプロデューサーに学ぶ、"つながり"をデザインする力(part2)

2.人間ポータルと呼ばれて
―長い間そうやってベンチャー企業の生態系の中心的な位置にいらっしゃった勝屋さんからみて、ベンチャー企業もしくはその経営者の魅力というのは何だと思いますか。
ベンチャーの経営者をみていて強く感じたことは、「世の中を変えて生きたい」というビジョンであり、パッションこそが最も大切なんだということです。成功しているベンチャーには共通して社会に問いかけたい"何か"があります。それを持っているということが重要なんですね。もちろんビジネスモデルも重要ですが、それはそうしたことが得意でサポートできる人もいるので、そういう人たちとつながることで解決できたりもします。やはり最初の「種」は強い"思い"です。特に今の時代はそれが大切だと思いますね。
現在は残念ながらこうした状況(不況)なわけですが、私自身は実はこんな時代こそチャンスなんだと思っています。ちょっとお金を儲けたいといった動機では決して起業できませんから。本物しか起業できないし、生き残れない時代なんでしょうね。これからは大きくビジネスの質が変わっていく。これまでのようにバーチャルなものから、本物の"リアル"なビジネスが評価される時代、それもグローバルで評価される時代になっていくのだと思います。だから強いビジョンを持ち、本当にいいモノやサービスを提供できる人にとってはチャンスだと思いますよ。
あと、こうしたポジティブエネルギー加えて、周囲に感謝できるという要素も重要だと思いますね。誠実で感謝の気持ちを持っている方の周りには、自然と支援者が集まってきますし、もし一時的に事業がうまくいかなくても、こうした人たちから支援者は離れていきません。私自身こうした"いい人たち"とつながっていたいと思っています。
―勝屋さんの考える"いい人"との出会いの場が「Venture BEAT Project」なんですよね。勝屋さんとの出会いのきっかけがまさにこのプロジェクトでした。このプロジェクトについて教えてもらえますか。
これは「個人ベースの交流」を通じて、IT・コンテンツ分野の有力なベンチャー企業と、この分野でイノベーションを起こすために社外の人材・技術をもとめる大企業との"つながり"を創っていこうという有志の集まりです。ベンチャー、大企業の中に「質の高い出会い」をつくり、そこから化学反応を起こしていこうというネットワーキングプロジェクトなんですね。
―勝屋さんたちの思いからスタートとしたビートプロジェクトですが、メディアに取り上げられたり、またIBM社内でも評価されているようですね。こうした勝屋さんのコミュニティプロデュースの状況を間近でみていると、勝屋さんの"つながり"づくりのすごさにいつも驚かされます。ある方からは「人間ポータル」とも言われている勝屋さんですが、どうやってこのような「場」づくりができるようになったのですか。
こうした人と人をつなげることは、わりと得意なのかもしれませんね。周囲の人からもそのことを指摘されたり、期待されることが増えてきました。話をしていて何となくその人の周波数が分かるといった感覚があるんですね。この波長の人とあの波長の人は合うんじゃないかって、直感で閃くんですね。抽象的ですけど(笑)
あとコミュニティを運営する上ではいくつか気をつけていることがあります。第1にフラットなことです。上から目線が入らないように、肩書きとか役職とか関係なく集まれるように配慮していますね。第2に境界を設けないことです。集団の意図や意思が入らないようにも工夫しています。第3に共通のテーマを設定するといいですね。あと個人的にはやっていて自分が楽しいことが大切。「役割」にはまるのではなく、自分自身が楽しむことですね。そうでないと続きません。またこうしたコミュニティはコントロールしないようにしています。ついついコントロールしたくなりますが、場の力に任せることも重要だと最近感じています。
-勝屋さんとお話をしていると、"直感"という言葉がよく出てきますね。経歴をみてもどちらかといったら理系・左脳派のようにも思える勝屋さんからこうした言葉を聞くと、ちょっと不思議な気もします。いつ頃からそういった直感というか右脳を意識されて使われるようになったのですか。
これもベンチャー関係者と出会ってからです。ベンチャーキャピタリストたちがベンチャーに投資を決める時、必ず見ているポイントがあるんですね。それはそのベンチャーが「アート」なのか「サイエンス」なのかということ。そして最近言われているのは成功するベンチャー企業は「アート」色が強いのではないかということなんです。
私自身成功する起業家の方と話をしていてそのことを痛感していました。経営者の方にどうしてそう判断したのですか?と尋ねると、意外にも「何となく」とか「直感で」という答えが多かったんです。MBAの教科書やロジカルではない世界でベンチャー経営者は判断している。そこから「アート」や直感の世界に興味を持ちました。今回そう指摘されるまで自分自身ではあまり意識していませんでしたが、自然とそうした能力を掘り起こして、開発してきたのかもしれませんね。




